絵描きの、おもに絵 日本画のこと 家の日常のこと。 彫刻家のことも時々。
鑑賞の記。画壇内外で注目を集める気鋭の実力派の個展が開かれると知って初日に出かけました。入り口の二枚仕立ての衝立の「犬草紙ー阿吽」がまず、いい。品格がある。どの作品も犬や動物を単に描いたものではないことは一目瞭然。人間の身近に生きる犬や様々な動物たちがそれぞれの個性や知性、感情を秘めながら、それぞれの生まれついた環境の中で、それぞれに与えられた”犬生”をひたむきに生きている。その健気な生き様が確かな生態観察を通して愛情こまやかに描かれている。岩絵具のざらついた感触や対照的に飄々たるためらいのない、かすれた筆致、柔らかな色使いは生き物たちの確かな実在感と同時に内在する彼らの生の危うさ、儚さをも仄めかしているかのようです。(それは人間存在そのものでもあるのでしょう)余白にさりげなく描かれている野の草や小さな虫たちもそれぞれに生きている。飼い主たちが愛情をこめて着せる犬たちの胴着は”犬衣(いぬごろも)”という雅びな現代の和語が似つかわしいような画家の独壇場―東儀ワールドになっている。どの犬衣も写生とは別の、画家の若々しい清冽な感性を垣間見させる「窓」になっていて主題を完結させている。今回の総合タイトル「ツカワシモノ」の意味は深い。個々の画題のネーミングもそれぞれに粋で時には諧謔的ーどれも画家の知性が横溢している。大作「犬も歩けば野辺の花」は特に空間の仕上がりが(この連想は画家の怒りを買うかもしれないけれど)狩野派の屏風絵を思わせるように堂々として絢爛豪華だ。日本画の伝統の王道を歩んできた画家の確かな力量を実感させる。私としては個人的には小品の干支の中の「龍」の繊細な線と、ゾクッとするような現代感覚の色彩が特に気に入りました。久々に眼の歓びと心のときめきを覚えた絵画展でした。ありがとうございました。これからも益々愉しみです。2009年11月13日 (墨桜)
匿名さま ご高覧のコメント、ありがとうございます。伝わらないこともなかなか多く、めげること多々ある私ですが、このような目線で鑑賞されること、本当に嬉しい限りです。怒りを買うかも。。。のくだりですが、私の地盤はやはり古典なので、むしろ光栄でした。「俗」に陥りやすいモチーフを扱いながらも、凛とした品を漂わせたい。。見て側さんに優しいようで難しさを強いているな、と思っていたのですが、伝わっていることがやはり嬉しく思います。 ご高覧、ありがとうございました。また宜しくお願い申し上げます。
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2 件のコメント:
鑑賞の記。
画壇内外で注目を集める気鋭の実力派の個展が開かれると知って初日に出かけました。入り口の二枚仕立ての衝立の「犬草紙ー阿吽」がまず、いい。品格がある。どの作品も犬や動物を単に描いたものではないことは一目瞭然。人間の身近に生きる犬や様々な動物たちがそれぞれの個性や知性、感情を秘めながら、それぞれの生まれついた環境の中で、それぞれに与えられた”犬生”をひたむきに生きている。その健気な生き様が確かな生態観察を通して愛情こまやかに描かれている。
岩絵具のざらついた感触や対照的に飄々たるためらいのない、かすれた筆致、柔らかな色使いは生き物たちの確かな実在感と同時に内在する彼らの生の危うさ、儚さをも仄めかしているかのようです。(それは人間存在そのものでもあるのでしょう)余白にさりげなく描かれている野の草や小さな虫たちもそれぞれに生きている。
飼い主たちが愛情をこめて着せる犬たちの胴着は”犬衣(いぬごろも)”という雅びな現代の和語が似つかわしいような画家の独壇場―東儀ワールドになっている。どの犬衣も写生とは別の、画家の若々しい清冽な感性を垣間見させる「窓」になっていて主題を完結させている。
今回の総合タイトル「ツカワシモノ」の意味は深い。個々の画題のネーミングもそれぞれに粋で時には諧謔的ーどれも画家の知性が横溢している。
大作「犬も歩けば野辺の花」は特に空間の仕上がりが(この連想は画家の怒りを買うかもしれないけれど)狩野派の屏風絵を思わせるように堂々として絢爛豪華だ。日本画の伝統の王道を歩んできた画家の確かな力量を実感させる。私としては個人的には小品の干支の中の「龍」の繊細な線と、ゾクッとするような現代感覚の色彩が特に気に入りました。久々に眼の歓びと心のときめきを覚えた絵画展でした。ありがとうございました。これからも益々愉しみです。2009年11月13日 (墨桜)
匿名さま ご高覧のコメント、ありがとうございます。伝わらないこともなかなか多く、めげること多々ある私ですが、このような目線で鑑賞されること、本当に嬉しい限りです。
怒りを買うかも。。。のくだりですが、私の地盤はやはり古典なので、むしろ光栄でした。
「俗」に陥りやすいモチーフを扱いながらも、凛とした品を漂わせたい。。見て側さんに優しいようで難しさを強いているな、と思っていたのですが、伝わっていることがやはり嬉しく思います。 ご高覧、ありがとうございました。また宜しくお願い申し上げます。
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